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外へ出て見ると、ウォルターが車で迎えに来ていた。
後部座席にはセラスも乗っている。
「お嬢様、首尾の方はいかがでしたか?」
「ん・・・アーカードがしっかり止めを刺したぞ。
吸血鬼ではなかったが、化け物には変わりない。
・・・後は被害にあった店主らを丁重に弔うだけだ。
明日からは真面目に仕事に取り組めそうだ。
迷惑をかけたな、ウォルター。」
「いいえ、お疲れでしょう。ささ、どうぞお乗り下さい。」
丁寧な手つきで後部座席のドアを開け、セラスの隣へと誘導した。
「インテグラさまあぁ〜・・・
本当にすみませんでした・・・私っ・・・」
車に入るなり泣きそうな顔つきで抱きつかれた。
吸血鬼の馬鹿力で加減無しに。
「大丈夫だ、セラス。それに気を抜いていた私も悪かったんだ。
・・・っそんなに気に病むな。」
金髪の頭を撫でながら落ち着かせる。
これ以上思い切り抱きしめられると窒息死してしまう。
「いや婦警、貴様の責任だ。」
車の外から厳しい声が掛けられた。
「お前の考えの無い行動のせいでインテグラは直に命の危険に晒された。」
冷たく突き刺す様な視線と辛辣な言葉をセラスへ浴びせ、
不機嫌そうに腕を組む。
「黙れ、アーカード。大事にならなかったのだから良いじゃないか。」
「・・・お前は婦警と私では随分態度が違うのだな。私はお前の情人だぞ。」
またふて腐れた男を完全無視し、ウォルターへ車を出すよう指示を出した。
仕方なしに、助手席へ乗ろうとした不死者の王をウォルターは器用に轢いた。
軽やかに跳ね上がる紅いコートに、
インテグラは何が起こったのか分からなかった。
セラスも状況が飲み込めずに固まっている。
「おや、失礼。」
アーカードの方を見もせずにさらっと謝るウォルターに、車内の空気は凍る。
「ウォルター・・・貴様、故意にやったな・・・。」
鮮血にまみれながら意地でも助手席に乗ろうとする。
迷い無くギアチェンジをする執事をインテグラは止められなかった。

ドウッ。

音と共にアーカードの巨体は車の下へと消えていった。
「・・・お嬢様を情人呼ばわりとは・・・、
やはり500年も年を経るとボケるものですな。」
「ウォ・・・ウォルター・・・?」
「お嬢様、セラス嬢。しっかりとシートベルトをお閉め下さい。
後部座席のシートベルト着用は義務になりましたからね。」
何も無かった様にインテグラへと、にこやかに話しかけるウォルターに、
執事の暗黒面を改めて垣間見、
しっかりとシートベルトをするセラスとインテグラだった。

その後アーカードは何があっても
ウォルターの運転する車には二度と乗らなかったという。


『ベンツの下で足掻く旦那』を書きたかった。この一言に尽きます。
実はこれ、半分実話なんです。  アーカード→小学生時代の私。   ウォルター→祖母。
または、    アーカード→高校生時代の私。  ウォルター→アットホームな家族連れ。
ええ、人生に2回跳ねられましたよ。でも多分少ないほう。
『おばあちゃん、轢いてるよ。』の一言が言えなくて辛かった小学生の夏・・・。
後者のアットホームな家族連れは逆に可哀相だったな・・・・(><)
休日に家族皆でショッピングに出かけて、皆で焼肉食いに行く為に急いでいた私と衝突しちゃって・・・。
警察沙汰にはならなかったけど、血がだくだく出てる足を引きずって焼肉食いにいったなぁ。懐かしい(-ε- )