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ファム・ファタールの定義 青いリボンが髪の間で揺れる。 背中の筋へ舌をゆっくりと這わせると、 アリスは堪えられないとでも言うように机の端に手を伸ばし 与えられる感覚から逃れようと身を捩らせる。 ブラッドはそれを許さず、更に奥へ身を沈めた。 しっかりとした作りの机の軋む音と共に、聞きなれた女の嬌声が耳に届く。 それは今まで抱いてきたどの女のものよりもブラッドの押し隠した焦燥を暴いてゆく。 中途半端に脱がせたドレスを肩から滑り落とし、軽く歯を立てた。 息を呑むアリスが軽く背を逸らすと、ブラッドの其れが更にアリスを追い詰める。 机に顔を押し付けているせいで、甘い声が聞こえなくなった。 「アリス、・・・こちらを向きなさい。」 ブラッドは否やを言わせない口調で少女の耳へと囁きかけると 僅かの躊躇は見られたが、アリスは大人しく仰向けになった。 書類がくしゃりと音を立てて、執務机から落ちてゆく。 目隠しをしているせいか、怯えて身を寄せてくるのが可愛い。 白い肌も、いつになく熱を帯びてブラッドの肌にしっとりと吸い付く。 しがみ付く様に、白い薄い爪で背中に痕を付ける。 低く呻くとアリスが力を抜いたのが解る。 その仕草が愛しくて、夢中になってしまう。 机上のインク瓶がカチャカチャと擦れ合い、忙しなく音をたてた。 後ろで結ばれたリボンが邪魔なのか、しきりに頭を左右に振る。 反った首筋に顔を埋め、甘い匂いを一息吸い込んだ。 他の自分に群がる女達と違う、化粧の匂いもフレグランスの類も匂わない なのに自分の情欲を否応なしに駆り立てる甘い、匂い。 アリス自身の香りをブラッドは好ましく思っていた。 外に出ると羽虫の様に女達が擦り寄ってくる。 気が向けばそれらの相手をする事もあるが、 似たり寄ったり同じタイプの女は食傷気味だ。 胸に指を伝わせる仕草も舌を絡める仕草も、どうしてもアリスと比べてしまう。 確かに女達は美しいが、それだけだ。 いや彼女達も雰囲気でわかるのか、あれこれ趣向を凝らしてはいる。 だが、つまらない。退屈だ。 とうとう今夜は気が乗らず、そのまま放って屋敷へ戻って来てしまった。 今までの自分からは想像ができない。 決して女を満足させずに帰ることは無かったし、 面倒だ、退屈だなどと感じた事は無かった。 ただ、この少女はこうして抱いているだけでも奇妙な充足感がある。 アリスの何処かが触れているだけでも 心の奥から満足してしまう自分はどこかおかしいのだろうか。 寝る前に未決済の書面だけでも片付けようと 酒を片手に執務机に向かった時、アリスが本を返しに来た。 それから数時間帯、時も忘れアリスを抱いている。 青いリボンが涙で色が濃くなっている所がある。 目だけで笑うと、ブラッドはアリスの目隠しを解いた。 瞼を閉じ、開けた口元から僅かに覗く白い歯に ブラッドはまた自分の中の情炎の火が滾るのがわかった。 薄く目を開けたアリスの目に黒髪を掻き揚げるブラッドが映る。 まだ収まりきらない荒い息を必死で落ち着かせ、アリスが口を開いた。 「・・・・っ私、これ嫌いだわ。」 「・・・・・なに?」 アリスの言葉に、一瞬頭に血が昇った。 それと共に僅かにブラッドの勢いが緩む。 「嫌なはずがない。あれだけ善がって啼いたのに。」 今の今まで繋がっていた場所に指を埋める。 くん、と軽くアリスの体が浮き上がった。 「ちょ、っ・・・やめ、ブラッド!」 直ぐさま唇を塞がれたアリスは、ブラッドの唇を噛んだ。 「・・・・・・・・・・・・。」 唇に滲む血を舌で舐め取り、目線をアリスに合わせる。 「・・・何が気に入らない。」 不機嫌さを隠しもせず、アリスを脅す。 沈黙で返事をしようとしたアリスだが、それは許されないと解り 目を瞑り、ゆっくりとブラッドに身を預ける。 「ブラッドだって解ってるけど・・・・。 あなたじゃなく他の誰かに触られてるみたいで・・・・嫌、なの。 それに、他の女の香水を匂わせたまま抱くなんて・・・マナー違反だわ。」 恥ずかしそうに胸に顔を埋める少女の言葉に、 ブラッドは固まった。 「そう、・・・・そうか。」 目の淵を赤らめ、上機嫌で顔を寄せてくるブラッドに アリスは口を尖らせ男を見上げる。 「ずるいわ、ブラッドは見えてるじゃない。」 「・・・だったらアリス、君が同じ事をやってみればいい。」 肌蹴た胸元から紋章の付いたスカーフを抜き取り、自ら目隠しをする。 「えっ・・・・ちょっと、ブラッド・・・。」 どこか楽しそうに小首をかしげる男を呆然と見詰める。 ブラッドは椅子に腰掛け、膝の上にアリスを当然の様に乗せた。 さぁ、アリス。と声を出さず唇だけで囁く。 アリスの体温が数度上がった。 こんな状況、耐えられない。 もしかしてこの男は、自分で動けと言うのだろうか。 そんな馬鹿な。そんなこと出来る訳が無い。 ブラッドは羞恥心に固まってしまったアリスの胸の頂を口に含む。 「んっ・・・やっ、だめっ・・・。 「抜けない様に私が支えて置いてやろう。」 目の前の男は本当に楽しそうにアリス急かす。 手を添えられ、腰が勝手に動き出す。 熱く、硬いモノがアリスの体内をゆっくりと押し広げていく。 「ゃ、あ・・・・ブラッドっ・・・。」 思わずアリスはブラッドの方に爪を立て、硬く目を瞑った。 やっと静まりかけた心臓が、急激に鼓動を早めてゆく。 「あ、あ、あ、あ、あっ、あん・・・」 「く・・・っ、アリス、力を抜きなさい。」 何かを堪えながら、喉の奥から掠れた声をだす。 目隠しをしているはずなのに、ブラッドはアリスの全てを器用に暴く。 こんなに自分の焦燥を煽る存在は今まで誰もいなかった。 アリスは違う。 その足元に跪いても構わない程、焦がれて止まない。 汗の滲んだ白い肌に、しがみつく薄い爪に、吐息を漏らす淡い桃色の唇に、 揺れるしなやかな脚に、恍惚の光を宿すその紺碧の瞳に。 ブラッドの肩に手を置き、腰をくねらせる少女に夢中になってしまう。 「あぁ・・・いい子だ、アリス。」 言いしな、ブラッド自身も腰を突き上げ、快楽を追う。 アリスは薄く開いた目から、自分を追い詰めている男を盗み見た。 ブラッドは眉根を寄せ、それでも薄らと笑みを口の端に浮かべていた。 この男は・・・、口元だけなのに何という色気を出すんだろう。 霞がかった頭の片隅でそんな事をぼんやりと考える。 考え事をした事が分かったのか、ブラッドは攻める様に アリスの首筋に痕を付け、胎内深く抉る様に突き上げた。 その瞬間、アリスの瞼の裏に火花が散り、視界が真っ白に塗り替えられた。 殆どブラッドによって揺り動かされていた体は更にブラッドにしがみ付いた。 「あっ、あ、・・・っひ、あ、ああーーーー!」 絶叫と共にきつく締め付けられ爆発しそうな欲望を 奥歯を噛み締めてなんとか堪える。 数拍置いて、しなだれかかったアリスの体を再び執務机の上に寝かせる。 不穏な雰囲気に、アリスは薄く開いていた目を見開いた。 「もう無理、無理無理!絶対無理だから!」 「何を言ってる。今日はまだ4回しかしてないぞ。 しかも今のは、まだ私は達ってない。」 半ば不思議そうにアリスを見つめる男は、 確かに汗で髪が頬に張り付いてはいるが疲労の色は欠片も見当たらない。 対するアリスは指にも力が入らないくらい根こそぎ体力を搾り取られている。 「目隠しと騎乗位は一緒にすべきではなかったな。 君の可愛らしい顔が見れなかった・・・・今後の参考にしよう。 さぁ・・・君はただ力を抜いて腰を上げていれば良い。 あとは私が善くしてあげよう。」 いつもの歌を詠む様な物言いと相まって、 かすれた声がアリスの体の芯を波立たせる。 アリスの様子に小さく笑った男は、 けだるげに吐いた吐息をアリスの耳へ吹きかけた。 愛しい私のファム・ファタール(運命の女)。 私の傍に居る限り、望みのものは何でも叶えよう。 だが、忘れてはいけないよ。 私を繋ぐ鎖は君の心臓と繋がっている。 君が私以外の者を望むその時は、この身もろとも塵に還るまで。 全ては君の望むままに。 |
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