愛と妄想の日々


「ありえないわ、ブラッド。」

一切の感情も込められていない目でブラッドを見返すと、
イカレ帽子屋は事も無げに口を開いた。

「どうして。」

心底不思議そうな顔に堪忍袋の緒が音を立てて千切れてゆくのがわかる。
「マシンガンといえばこれだろう?」
「そんなの英国の淑女マナーブックには絶対載ってないわよ。
第一、聞いた事も見た事もないわ。そして金輪際関わりたくないわ。」
息も継がずに思いの丈をそのままブラッドにぶつける。
「みんな君の事を思って薦めているんだよ、アリス。
君の不利になる事は全くない。心配せずにこれを着なさい。」
差し出されたのはセーラー服。
なぜか丈が短めで、もろに太腿が露出する。
スカートの縁にはなぜかレースが縫い付けられており、
ガーターベルト一式も準備されていた。

「言っておくけど、私はこんな事には関わらないけど、
この服の用途だけ教えて頂戴。今後の参考にするわ。」
無表情にアリスは淡々と話した。

「この服は自分の信念の為に戦い、
この世にはびこる魑魅魍魎の悪い輩を排除する力を持つものだけが
袖を通す事が許される、神聖な女神の正装なんだ。
つまりはだね、アリス。
この服を着て、辺りに銃を乱射して
一言『カ・イ・カ・ン♪』と言うだけなのだよ。
吐息と同時に『♪』を忘れずにね。
至極簡単なものだろう?」

(この阿呆。頭の中腐ってやがんのか。)

食い入るようにアリスを見つめ、熱弁を振るうブラッドに
アリスは引いた。かつて無い程ドン引きした。
ふと周りを見渡すと、最前列にペーターとビバルディ。
エースと、ボリスと距離を置いてピアス。
ナイトメアとグレイに至ってはブラッドへ拍手を送っている。
弾かれたユリウスやゴーランドまでいる。
それらずべてが全員が、正座して、中にはビデオを回している馬鹿もいた。

それにしてもこの服、確実に足を軽く上げるだけで中まで見えてしまう。
もっというと、なぜ上着がこんなに薄手なのか。
下に体操服でも着ようものなら容赦なく透けるだろう。
これをアリスに着ろとせまる野郎どもの魂胆は明らかだ。

「・・・分かったわ、ブラッド。そのマシンガンを少し貸してくれるかしら?」

「勿論だとも。」

鼻の下を伸ばして生き生きとマシンガンを小娘の手に渡す。
仮にもマフィアのボスとは思えない形相だ。
対するアリスは、にこにこと天使の様に微笑み
ペーターを始め一同をざわめかせた。
「あ、待ちなさい。アリス、コレを着てからでないと・・・」

「黙れ。」

天使のような微笑を浮かべたまま、アリスは周囲に実弾を乱射した。
辺りは一面血の海と化し、座布団が宙を舞う。
最期まで踏みとどまっていたペーターとブラッドは後に語る。

『癖になりそうだ。』 と。



それでも私はアリスのセーラー服が見たい。
ブレザーでもいいな。うん。